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鎮魂の碑・皿と上野さん鎮魂の碑・皿と上野さん鎮魂の碑・皿と上野さん
「地域での子供の頃の思い出は?」とお尋ねすると
「『氏神様への奉納相撲』と『お猪子さん』」とおっしゃった上野さん。
そこで「お相撲の戦績はどうでしたか?」と突っ込むと
はにかんだような照れた笑いと一緒に「体が大きかったから、上級生にも勝ちましたよ!」「下級生には、負けてもあげましたがね!」 と 答えてくださいました。
その優しい笑顔の裏では、地域の先輩たちが育んできた、歳時や行事に「ふれる 機会を知らないで育つ」 「現代の親と子供達への憂い」があるように思えました。
地域の伝統行事の継承は、伝統行事を残すという意味以上に、継承を通じて、親と子供が、地域の人々とふれあい、地域を知り、温かさを感じ、感動し、家族のような 一体感を育くんでくれる 「地域活動を通じての、貴重な実体験」 が大切です。 この、かけがえのない実体験こそ、真の『地域が子供を育てる力』という事でしょう。

上野さんが「ボランティア」に目覚められたのは、36年間勤めた会社を退職して 地元に帰って来られた時期でした。 上野さんのふるさとも 都市化の進展に伴い、地域の人々が「地域の真の良さを知らない・語れない」という現実、さらに、一番衝撃的だった記憶は、神戸の少年が起こした残忍な事件 だったそうです。

日常的に、私たちの生活の周辺では、これまでの「日本の国のあり方」や「日本人としての生き方や考え方」に対して、真正面から、日本人に、家庭に、さらに親に、 教師にと、突きつけられる出来事が次々とおこっています。「責任を誰かのせいにした日本人の問題」です。
親自身が家庭で、子供に「誇りある自国の歴史や、よき自国の伝統文化」を教え、語ることのできない  「家庭の教育力の低下、つまり親の問題」 が、大きな原因であります。

「地域の課題解決」の為には、まず「志ある、地域のボランティアグループを基盤」に、 郷土の 「使命に生き、貢献された、先人、恩人、賢人」 を発見・発掘し、 その「先人、恩人、賢人」の「生き方、考え方に学ぶ、学習の場」を持つこと。 さらにその場を、「地域・学校・家庭で共有」し、「ふるさとを愛する生涯学習の場」に 発展させてゆく、地道な活動が必要だと感じます。 「まちづくり・地域づくりは、つまり、地域の良き後継者づくり」です。その一助になればと、現在、複数のボランティア・グループに在籍し、精力的に活動されています。

そんな上野さんも、退職されるまでは日本の主要都市を転々とする いわゆる「会社型人間、熱血サラリーマン」だったそうです。
そこで「その頃の『座右の銘』は何でしたか?」とお尋ねすると、一瞬困った表情をされ、 「そういった意識が、その頃の自分には薄かったんです。今は、深く反省しています。」と おっしゃいました。
貧しい戦後を生き抜くために、ただ一心に働く両親の姿を見て育ち、その手伝をし、 上野さん自身も、滅私奉公に働いてきた。 これは極一般的な日本人の姿でしょう。 「経済的な、物の豊かさは得られたが、良き日本の伝統文化や、精神文化を失った」 というのが、今日の日本の姿という事なのでしょうか。

「地域から、日本の再生への第一歩」は、まず「家族の絆」を取り戻すことでしょう。 ポイントは、3つの心づかいで、『感謝の心』『思いやりの心』『自立の心』です。 さらに、親自身が家庭で、子供に「誇りある自国の歴史や、よき自国の伝統文化」を しっかり教え、語ることができるよう「親自身が、自覚し、学びなおす」 ことです。 「自国の歴史、伝統文化を尊重し」「家族を敬い」「国を愛する」ことです。 「子供は、親の習慣を真似ます」だから、まず「親自身の習慣を変える」ことです。 「子供の問題は、親自身の生き方、考え方の問題」で「子供の問題」ではありません。 今後の、私自身の大きな課題でもあります・・・と、 今日も、精力的にボランティア活動に励んでいらっしゃいます。

愛媛県生涯学習センターメモリアルホールにて   久谷の必見スポット(1)
≪愛媛県生涯学習センター
   メモリアルホールにて


久谷の必見スポット(2)
久谷支所(荏原公民館)
『鎮魂の皿の碑』≫
鎮魂の皿

お話を伺っている間中、終始にこやかにお話下さった上野さん。
最後に久谷の必見スポット:久谷支所(荏原公民館)にある「慰霊の塔」(別名「鎮魂の皿の碑」)を 案内して下さいました。
ここには、ひたすら祖国の繁栄、郷土の発展、家族の幸せを念じ散華された353柱の英霊が眠っておられ、地元の方々のご厚意によって建立されたものだそうです。
その鎮魂の皿の幾つかについて説明して下さってる時、 上野さんは、足元のゴミを静かに拾い、自宅まで持ち帰られました。 その姿を見ていて、上野さんのこの場に対する思いを感じました。

静かな語り口の中に、キラキラ輝くものを秘めている・・・。
そんな上野さん。
「私のボランティア(ライフ・ワーク)の最終テーマは『よき、日本の再生』です。 大きいテーマですけどね〜。生かされているかぎり続けてゆきます。これが私の使命です。使命に生きられた、先人・恩人・賢人へのせめての償いです。」と笑いながらおっしゃってました。


上野 拓也:  昭和18年(1943年)生まれ。松山市東方町在住。
文部科学省所管の社会教育関係団体の維持員で
「心の生涯教育」普及のためボランティア活動中
「日本の歴史に学ぶ 愛媛」副会長 など
2003.4.11